小学校以来,角度の単位には円の一周を360°とする60分法に慣れているが,微分積分では,次に述べる弧度法の単位(ラジアン)を用いる. 図1のように,2つの相似図形では対応する辺の長さの比が等しいので「弧の長さ/半径」の比は,図形の大きさによらず扇形の角度だけで決まる. そこで,弧度法では θ = =
を角度の定義とする.(単位はラジアン.ただし,ラジアンは省略してよい.) |
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図1 |
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図2のように,角度を2倍,3倍,... とすると弧の長さも2倍,3倍,... となり,弧の長さと角度は比例するので,60分法の角度を弧度法の角度に直すには,円周の長さから比例計算で求めるとよい. 図3のように,360°=2(ラジアン),180°=(ラジアン)を基本とする.
(幾つかの例)
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図2 |
■即答問題■
次の角度を弧度法に直せ.([Start]を押して,選択肢から選べ) |
[ Start ]
[ Stop ] [ Next ]
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○ 一般角 角度は,小学校以来,図4のように2直線の間の角を分度器で測り,向きは考えなかったが,これを負の角や360° (2ラジアン)以上の角度に拡張する. 図5のように,x軸の正の向きを始線とし,左回り(反時計回り)を正の向き,右回り(時計回り)を負の向きとする.このように,正の角・負の角,360°(2ラジアン)以上に拡張した角度を一般角という.一般角を考えるときは,動径(実際の計算に当たっては円周上の点)が角度を表現する. 角度を定めれば動径は定まるが,図6のように動径を定めても角度はただ1つには定まらず,1周の整数倍の差がある角度は,すべて同じ動径に対応する. |
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■即答問題■
次の角度を表わす動径を,図の円周上の点で示せ. |
[ Start ]
[ Stop ] [ Next ]
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○ 動径が表わす一般角 角度を定めれば動径は定まるが,動径を定めても角度はだた一通りには定まらず,数回転した角度はすべて同じ動径に一致する.そこで,ある動径が表わす1つの角度をα とするとき,動径が表わす一般角θ は 例 図6の動径OPの表わす一般角は |
○ 三角関数の定義 90° までの三角比は,「直角三角形」の辺の長さの比で定義される(図7)が,90° 以上の角度や負の角に対しては「直角三角形」が描けない. そこで,一般角の三角関数を定義するときに,動径を代表する円周上の点に対して,r:半径,x:x座標(符号付きの正負の数),y:y 座標(符号付きの正負の数)として,図8のように定義する. (ただし,などは分母のxが0となるため定義されない.) 筆算で解く問題のほとんどは,右図9の2つの直角三角形において,斜辺rの長さは正とし,他の2辺 x , y に符号を考えればできる. |
図7 |
○ 三角関数の符号 半径r はつねに正なので,三角関数の符号は,x ,y の符号で決まる.そこで,動径のある象限が決まれば三角関数の符号は決まる.(図参照) |
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例 図から,次の三角関数の値が分かる.
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■即答問題■
次の三角関数の値を選択肢から選べ. [ 1問 / 全20問 ] |
[ Next ]
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○ 三角関数の相互関係 図10のような直角三角形においては,ピタゴラスの定理(三平方の定理)により,x2 + y2 = r2が成り立つ. x,yが負の場合にも,点(x,y)と原点との距離の公式から,x2+y2 = r2がいえる. この式の両辺をr2で割ると + = 1 したがって, また, だから (1)の両辺をで割ると, ・・・(4) |
図10 (はを表す.)についても同様.この他,・・・の記号も用いられる. 例 (1) が第2象限の角で,のとき,の値を求めよ. (答案) より 第2象限の角だから よって (2) のときの値を求めよ. (答案) |