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2 ベクトルと基本概念2

○ 前節でベクトルの1次結合を学んだ.ここでは,1次結合に関わる重要な概念を解説する.
○ ベクトルの1次結合がになるのが特別な場合に限られるとき,すなわち,
となるのが,のときに限られるとき」,ベクトル1次独立であるという.1次独立でないとき,1次従属であるという.
【1次独立の定義 】
ならば
が成り立つとき,1次独立であるという.
※「」が,どんな についても成立することは自明の理であるが,ここでは
」すなわち,
」となるのが,「」の場合だけとなるの組に注目している.
※「p⇒q」は,その対偶「qでない⇒pでない」と真偽が一致するから,上に述べた1次独立の定義は,次のように言い換えることができる.
が1つでも0でなければにはならない」
 例えば,であるのにとなるときは,両辺をで割って移項すれば
となり,が他のの1次結合で表せることとなる.
このようなは1次独立ではない.すなわち,1次従属である.
以下についても同様だから,一般に,いずれか1つのベクトルが他のベクトルの1次結合で表わされる組を1次従属,どのベクトルも他のベクトルの1次結合で表現できないときを1次独立と定義していることになる.(*)

例1
(1) =(1, 0),=(0, 1) は1次独立である.何故なら,のとき,
より,が成り立つからである.
「⇒」や「ならば」という用語をクールに聞き流さないことが大切.変形していくと,になるとは,「解があれば必ずこれを満たすはずである」ということ,つまり,「これ以外にはない」という意味に理解することが重要.
(2) =(1, 2) ,=(2, 3)は1次独立である.何故なら,のとき,
より,は連立方程式

の解となり,が成り立つからである.(解があれば,になるとは,他にはないということ.)

(3) =(1, 2) ,=(2, 4)は1次従属である.何故なら,のとき,
より,は連立方程式

の解となり,を満たすは0でなくともすべて解となる.
※ 「1次独立・1次従属は,の連立方程式が自明解 以外の解をもつかどうかで判断できる」が,この問題については,次のように即答することもできる.
となっている(で表わされる)から,これらは1次従属である.(*↑)

(4) =(1, 0),=(0, 1), =(2, 3)は1次従属である.何故なら,となってで表せるからである.
 連立方程式で調べると次のようになる.

ならば

よりは連立方程式

の解となり,を満たすは解となる.(自明解以外に解が存在する.)
【 要点 】
○ ベクトルについて,が自明解以外の解をもてばこれらのは1次従属である.自明解のみをもつときは1次独立である.
○ ベクトルについて,いずれか1つのベクトルが他のベクトルの1次結合で表わされるとき,これらのは1次従属である.どのベクトルも他のベクトルの1次結合で表現できないときは1次独立である.」

○ 2次元の数ベクトルは,で表わされる.このとき,の2つのベクトルを用いれば,どのようなベクトルでもの1次結合で表せる.


 をR2標準基底といい,R2によって「生成される」「張られる」という.
○ 3次元の数ベクトルは,で表わされる.このとき,の3つのベクトルを用いれば,どのようなベクトルでもの1次結合で表せる.



 をR3標準基底といい,R3によって「生成される」「張られる」という.

○ ベクトルの組が R2 や R3 の部分集合を生成することがある.
例2
の1次結合の全体

は,の形のベクトルを表わし,R3を生成するわけではない.しかし,Lの任意の要素について,の1次結合はLの要素となる.


○ 上の例のように,Rnの部分集合Wの任意の要素の1次結合もまたWの要素となるとき,Wはによって生成される(張られる)部分ベクトル空間であるという.
•WがRnの部分集合で
(1次結合について閉じている)
が成り立つとき,WをRn部分ベクトル空間という.
次のように定義してもよい.
•WがRnの部分集合で
(和とスカラー倍について閉じている)
が成り立つとき,WをRn部分ベクトル空間という.
例3
(1) の1次結合の全体
は,R3部分ベクトル空間で一つの平面を表わしている.
 実際,ならば と表せるから,



なお,一般には,の内分点(外分点)の定数倍だから,ベクトルと同一平面上にある.(のときも結果は正しい.)
 上の場合,Hは張られる部分ベクトル空間と呼ばれ,と書く.
(2) 上の例(1)において,とおくと,
となるから,で表わされるベクトルはでも表わされ,Hはで張られる.
(1)(2)の例で,の組やの組はHの基底といい,その個数(=2)をHの次元という.

■確認テスト■ 
には半角数字で答え,には漢字で答えよ
(1) のとき,が1次独立かどうかを調べたい.次の空欄を埋めよ.
λ12=のとき,λ1(1, 1)+λ2(2, 3)=(0, 0)より,λ1,λ2は次の連立方程式の解となる.
    λ1 + λ2 = 0
    λ1 + λ2 = 0
これを解くと,λ1 = λ2 = となるから,
は1次である. 
(2) =(1, 1, −1),=(1, 2, 1),=(2, 3, 0)のとき,が成り立つ.このとき,は1次である.
(3) 次の空欄を埋めて,R2の任意のベクトルが,ベクトルの1次結合で表わされることを示せ.
 「となるλ1,λ2が求まればよい.x, yを与えられた数,λ1,λ2を未知数として,次の連立方程式を解く.
    λ12=x … (A)
    λ1−λ2=y … (B)
 {(A)+(B)}÷2よりλ1=
 {(A)−(B)}÷2よりλ2=となるから,

  任意のベクトルは,ベクトルの1次結合で表わされる.」  
(4) =(0, 1, −1),=(1, −1, 1)とするとき,=(1, 0, k)がで張られる部分ベクトル空間のベクトルとなるように定数kの値を定めよ.(空欄を埋めよ.)
が成立するようにkの値を定める.
(1, 0, k)=λ1(0, 1, −2)+λ2(1, −1, 1)より
    1=λ2
    0=λ1−λ2
    k=−2λ12を解くと
λ1=,λ2=だからk=  
(5) を基底とする部分ベクトル空間において,ベクトルを用いて,と表わされるとき,λ1,λ2を基底に関するの"成分"と呼ぶことにする.例えば,=(1, 0, 0),=(0, 1, 0)を基底とする部分ベクトル空間において,ベクトル=(x, y, 0) は,と表わされるから,に関するの"成分"はx, yとなる.
 ベクトル=(1, 1, 0),=(1, −1, 0)を基底とする部分ベクトル空間において,基底に関するベクトル=(5, 3, 0)の"成分"を求めよ.(空欄を埋めよ.)
となるλ1,λ2を求める.
    5=λ12
    3=λ1−λ2 を解いて
λ1=,λ2=が求める"成分"となる. 」  
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