13 固有値この章では,行列は断らない限り正方行列を扱い,n次方程式がつねに解をもつように,数値は複素数までの範囲で考える.○ 固有値の定義
n次正方行列に対して
とすると, となり,はの固有値であり,はに属する固有ベクトルである. また,もの固有値であり,はに属する固有ベクトルである. ○ 固有値と固有ベクトルを求めるには,すなわちが以外の解をもつようなλの値を求める必要がある. n次正方行列に対して,n次多項式 (書物によっては,をで定義することがある.) また,これを0とおいたλのn次方程式
に対して固有多項式chA(λ)を求めると, (ただし,trace(A)は対角成分の和a+d) 一般に,n次正方行列Aに対しても次が成り立つ. chA(λ) = |λE−A|=λn−trace(A)λn−1+ … + (−1)n|A| (ただし,trace(A) は対角成分の和a11+a22+ … +ann) |
定理8
(証明)が行列の固有値となるための必要十分条件は,となることである. (→) が行列の固有値,すなわち → のとき,
ならばが存在することとなり,
(←)に左からを掛けると,となって矛盾. したがって, ならば,
は正則でないから,同次方程式
は,自明でない解をもつ.
このときは,固有値に属する固有ベクトルとなっている. ○ 固有方程式chA(λ) =0はλのn次方程式なので,複素数の範囲で重複を含めてちょうどn個の解 λ1,λ2, … ,λnをもつ.(ガウスの定理,代数学の基本定理) ○ 以上から,固有値と固有ベクトルを求めるには,「固有方程式を解いて固有値を求め」「各々の固有値に対する同次方程式の自明でない解を固有ベクトルとすればよい.」 |
行列の固有値と固有ベクトルを求めよ. (解答) を解くと, ア) のとき, (※としてもとしても同じである.以下同様.) 拡大係数行列において(2)行−(1)行の変形を行うと, となるからとおくと 拡大係数行列において(2)行+(1)行×4の変形を行うと, となるからとおくと 固有値,固有ベクトル…(答) 例4 行列の固有値と固有ベクトルを求めよ. (解答) を解くと,(iは虚数単位 ) ア) とき, 拡大係数行列において(1)行÷iの変形を行うと, (参考 ) 拡大係数行列において(2)行−(1)行の変形を行うと となるから とおくと, イ) のとき, 拡大係数行列において(1)行÷ (−i) の変形を行うと, (参考 ) 拡大係数行列において(2)行−(1)行の変形を行うと となるから,とおくと, 固有値,固有ベクトル…(答) (※この例のように,行列の成分がすべて実数の場合でも,固有値が虚数となり,固有ベクトルが複素数を成分とするベクトルとなることがある.) 例5 行列の固有値と固有ベクトルを求めよ. (解答) を解くと, を解くと, 拡大係数行列において(2)行+(1)行×2,(3)行+(1)行×2の変形を行うと (3)行÷(−3)の変形を行うと となるから とおくと さらにとおくと 拡大係数行列において行の変形を行うと・・・(途中経過略)・・・ となるから,とおくと 拡大係数行列において行の変形を行うと・・・(途中経過略)・・・ となるから,とおくと さらにとおくと 固有値,固有ベクトル…(答) 固有値,固有ベクトル…(答) 固有値,固有ベクトル…(答) |
■確認テスト■ |