7 連立1次方程式2 ○ 以下においては,拡大係数行列の基本変形を用いて,具体的に連立1次方程式を解く方法をまとめてみる. 例1
の拡大係数行列 を基本変形すると, となるが, これは,
この例においては,未知数(x1,x2,x3)の個数は n=3,係数行列,拡大係数行列の階数(先頭の 1 の個数)はrank(A)=rank([A])=3となっている. ○ この例のように,rank(A)=nとなるときは,連立1次方程式はただ1つの解が存在する. 例2 (A) 基本変形の結果,拡大係数行列が となるようなときは,
を表わしており,x1,x2 のうちいずれか1つは任意定数とすることができる. 以下においては,先頭の 1 に対応しない未知数 (この例では x2)を任意定数 c とおくことにすれば,先頭の 1 に対応する未知数 (この例では x1,x3)について解けることとなる.
(B) これに対して,基本変形の結果,拡大係数行列がとなるようなときは,
第3式0x1+0x2+0x3=1はどんなx1,x2,x3を持ってきても成立しない. |
上記 (A)(B)は,係数行列のうち,すべての成分が0となる行(3行目)について右辺が0であるか否か(注の部分)の相違であるが,これは係数行列の階数(先頭の 1 の個数) rank(A) と拡大係数行列の階数(先頭の1の個数)rank([A])が等しいか否かで区別することができる. すなわち,上記 (A)においては rank(A)=rank([A])=2 であるが,上記 (B) においては,rank(A)=2であるのに対して,3行目の右辺が1であるからrank([A])=3となる. rank(A)=rank([A])<nのときは上記(A) の形となり,n−rank(A)個の任意定数をもつ解が存在する. これに対して,rank (A) ≠ rank ([A]) のときは,上記 (B) の形になるから,連立方程式の解は存在しない.
定理2
○ 例3(1) 方程式の個数がm個,未知数の個数がn個の連立1次方程式 (2) 方程式の個数がm個,未知数の個数がn個の連立1次方程式 未知数x1,x2,x3,x4,x5 の連立1次方程式において,拡大係数行列の基本形が[A]= となったとき,rank(A)=rank([A])=3だから,解が存在し,5−3=2個の任意定数を含んでいる. 先頭の1に対応しない未知数をx4=c4,x5=c5とおくと,x1=−c4, x2=4−3c5,x3=5+c4 ,x4=c4,x5=c5となり, ベクトルを用いて, と書くことができる. ○ 例4 未知数x1,x2の連立1次方程式において,拡大係数行列の基本形が [A]= となるときは,rank(A)=2,rank([A])=3だから,解は存在しない. ○ 例5 未知数x1,x2の連立1次方程式において,拡大係数行列の基本形が [A]= となるときは,rank(A)=rank([A])=2だから,ただ1つの解が存在し, と表わすことができる. |
○ 連立1次方程式A=の定数項(右辺)が零ベクトルであるとき,すなわち,
同次形の連立1次方程式は,つねに = を解にもつ.この解を自明な解という.( 0ai1 + 0ai2 +…+ 0ain が 0 に等しいのは自明の真理である.) 同次形の連立1次方程式では,行基本変形によって右辺に1が登場する余地はなく,明らかにrank(A)=rank ([A])が成り立つ.また前節に示したように,rank(A)≦mかつrank(A)≦nであるから,m<nならばrank(A)≦m<n となって,任意定数が現われる.よって,次の定理が成り立つ.
定理3
(1) 方程式の個数が m 個,未知数の個数が n 個の同次形連立1次方程式 ※ 参考 ○ 上の定理2(1)は,行列Aの列ベクトルが1次独立な場合に対応する. すなわち, とおくと, 「が1次独立」⇔「ならば」 「A=が自明な解のみをもつ」⇔「A=ならば」 ○ 上の定理2(2)は,行列 Aの列ベクトルが1次従属な場合に対応する. すなわち, 「が1次従属」⇔「が以外の解をもつ」 「A=が自明でない解をもつ」⇔「A=が以外の解をもつ」 |
○ 例6
1行と2行の入れ替え
2行+1行×(−2)
2行÷(−3)
1行+2行×(−2), 3行+2行×(−3)
3行÷5
1行+3行×(−3), 2行+3行×3
したがって,rank(A)=3 方程式は自明な解x1=x2=x3=0 をもつ. ○ 例7
2行+1行×(−2)
3行+1行×(−4)
2行と3行の入れ替え
2行÷3
1行+2行×(−2)
したがって,rank(A)=2となり,方程式は自明でない解をもつ. x3=c3とおくとx1=5c3,x2=−c3,x3=c3だから |
■確認テスト■
|