1 ベクトルと基本概念1 ○ n個の数x1, x2, …, xn を順序をつけて横に並べたもの:
(x1, x2, …, xn)
をn次元数ベクトルという.数を横に並べているので,横ベクトルまたは行ベクトルともいう.個々の数x1, x2, …, xnはベクトルの成分と呼ばれる. ○ 数を縦に並べたもの
例1 ある人の今日の朝食代が200円,昼食代が300円,夕食代が500円のとき,この人の今日の食費は,ベクトル
※ ベクトルのように,数字の並び方を変えれば内容が変わるものを表わすとき,数学では丸い括弧 ( , ) を使う.(200, 300, 500)
で表わすことができる.このとき,1番目の数字を朝食代,2番目の数字を昼食代,…としているから,(300, 200, 500)
とすれば,朝食代と昼食代が入れ替わってしまう.※ 高校の数学では,ベクトルは n=2, 3 次元のときだけを扱い,図形と結びつけて理解したが,以下においてベクトルは「成分の順序に重要な意味のある情報」と理解すればよく,4次元以上の図示できない場合も取り扱う.また,以下の内容を理解するには,高校でベクトルを学んでいなくても差し支えない. |
○ ベクトルは,やvのように矢印の付いた文字や太文字で表わされる. ○ ベクトルには,2つの演算:和とスカラー倍が定義され,それらもベクトルになる.
がn次元の実数ベクトルであるとき,
=(u1, u2, …, un),=(v1, v2, …, vn)とおくと,
もn次元の実数ベクトルになり, =(u1, u2, …, un)+(v1, v2, …, vn)=(u1+v1, u2+v2, …, un+vn) =λ(u1, u2, …, un)=(λu1, λu2, …, λun)である.
よく使うギリシャ文字の読み方
よく使うギリシャ文字の「小文字」
α … アルファ β … ベータ γ … ガンマ λ … ラムダ μ … ミュー π … パイ アルファベットのA 〜 Z に対応している.他にもあるがよく使うものから覚えればよい. → 閉じる ← 例2 夫の今日の朝食代が200円,昼食代が 300円,夕食代が 500円,妻の今日の朝食代が250円,昼食代が150円,夕食代が550円のとき, 夫の今日の食費を表わすベクトルは,
=(200, 300, 500)
妻の今日の食費を表わすベクトルは,
=(250, 150, 550)
この二人の今日の食費を表わすベクトルは,
=(200+250, 300+150, 500+550)=(450, 450, 1050)となる.
また,夫の30日間の食費を表わすベクトルは,
=30(200, 300, 500)=(6000, 9000, 15000)となる.
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※ 上に述べたことは,ベクトル空間という数学用語を用いて,次のように表わすことができる。 「すべてのn次元の実数ベクトルがつくる集合をベクトル空間といいRnで表わす.このとき,Rnのどんな要素をもってきても,それらの和とスカラー倍は,Rnの要素となる.」
ならば
○ ベクトルの和およびスカラー倍については,次の関係が成り立つ.(ベクトル空間の任意の要素および実数について,次の関係が成り立つ.これらはベクトル空間の公理と呼ばれるが,ここでは深入りしない.)
および実数について
◇文字式の和と類似の性質◇ (1) 任意のに対して
…足されるベクトル,足すベクトルを入れ替えても結果は変わらない.
(2) 任意のに対して…3つ(以上)のベクトルの和は,どの順に和を求めても結果は変わらない.
(3) 任意のに対して次が成り立つようなベクトルが存在する.どちらの意味に解釈されても同じものとなるので,と書くことができる. …1つのベクトル空間では,はすべてのベクトルに共通なものがただ1つ存在する.
(4) 任意のに対してそれぞれとなるベクトルが存在する.…逆ベクトルはそれぞれのベクトルに対応して1つずつある.
◇文字式の定数倍と類似の性質◇…ベクトルの和はと書いてよい. (5) 任意のに対して (6) 任意のに対して (7) 任意のに対して (8) 任意のに対して |
○ ベクトルのスカラー倍の和 をベクトルの1次結合という.
例3
(1) のとき,
とが平行でない場合の例を示しています
はのようにの1次結合で表わされる.(2) のとき,
とが平行である場合の例を示しています
なぜならば,とのある1次結合に対してが成り立つとすると, |
○ ベクトル=(x1, x2, …, xn)と=(y1, y2, …, yn)の内積を次の式で定義する. =x1y1+x2y2+…+xnyn ※ ベクトルの内積はベクトルになるのではなく,単なる数になることに注意.
例4
(1) りんご,かき,みかん1個の価格が各々150円,100円,80円であるとき,これらの果物の価格はベクトル =(150, 100, 80)
で表わされる.また,りんご,かき,みかんを各々3個,4個,5個セットにした贈り物の果物の個数は,ベクトル=(3, 4, 5)
で表わされる.このとき,贈り物1セットの合計価格は =150・3+100・4+80・5=1250 (円)
で表せる.(2) ある人の1日当りの朝食代が 300円,昼食代が 500円,夕食代が 800円のとき,この人の1日の食費は,ベクトル =(300, 500, 800)
で表わすことができる.この人が1週間に朝食,昼食,夕食を各々5回,6回,7回食べたとき,この人の1週間の食事回数は,ベクトル=(5, 6, 7)
で表わされる.このとき,この人の1週間の食事代金は,=300・5+500・6+800・7=10100 (円)
で表せる.なお,この人の1日3食の食事代金は
=(1, 1, 1)
とおくと
=300・1+500・1+800・1=1600 (円)
で計算できる.
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■確認テスト■ 次の計算をせよ.(入力は半角数字で) |