◇関数とは何か◇集合Aの要素に集合Bの要素を対応させる規則が与えられているとき,この対応の規則をAからBへの写像という.写像においては,a∈Aが定まればb∈Bが定まることが重要である. 写像のうち,数に関する集合から数に関する集合への対応を関数という.(*) 変数xの値を定めれば,変数yの値が定まるとき,xを独立変数といいyを従属変数という. ※ 関数として,中学校,高等学校では式で書かれるものを扱ったが,自然現象や社会現象を研究する上ではもっと広く,一方を定めれば他方が定まるものと考える.その決定のメカニズムは必ずしも数式で表現できるものばかりではない. |
[記号] aが集合Aの要素であることを,a∈Aで表わす. [記号] 実数全体の集合をRで表わし,2次元の実数の集合をR2で表わす. このとき,点 (3 , −4) はR2の要素となっている.すなわち,(3 , −4) ∈R2 同様にして,点 (−1 , 2 , 3) ∈R3 (*) 「都道府県」から「都道府県庁所在地」への対応のように数でないものと数でないものの対応は,関数ではない写像である. 例 愛知県 → 名古屋市 「気温」から「天気」への対応のように,気温を定めても天気が定まらないような対応は,関数でもなく写像でもない. 例 15°C → 雨?,晴れ?,曇り? |
1. 対応規則が既知の数式で表せないもの (1) RからRへの関数の例 ・ サイコロを何回も振るとき,第x回に出る目をyとするとき,xからyへの対応 ・ 円周率πにおいて小数第x位の数をyとするとき,xからyへの対応 ・ 素数を小さい方から順に並べたとき,第x番目の数をyとするとき,xからyへの対応 ・ 日時tから,その時点における円/ドル為替レート rへの対応 (2) RからR3への関数の例 ・ ある人について,日時tからその人のいる座標(x:東経,y:北緯,z:標高)への対応 (3) R2からRへの関数の例 ・ ある時点で(x:東経,y:北緯)からその地点を中心とする半径500m以内にいる人の数への対応 (4) R4からR5への関数の例 ・ 地球の気候に関して,(x:東経,y:北緯,z:標高,t:日時)から(T:気温,P:気圧,vx:風速東向き成分,vy:風速北向き成分,vz:風速上向き成分)への対応 |
問 左の例以外で,対応関係の数式が必ずしも明らかでない関数の例を,R→R,R→R3について1つずつ述べよ. |
2. 対応規則が既知の数式で表せるもの (1) 比例 ・ y = ax(a:単価,x:個数,y:価格) 通常の買い物では,価格は個数に比例している. (2) 1次関数 ・ y = ax+b (携帯電話について,a:1分当り使用料,x:1か月間の利用時間(分),b:基本料金,y:1か月間の料金) |
※ 1次関数のグラフは直線になる. y = ax+bにおいて,aは傾きを表わし,a>0ならば右上がりのグラフになり,a<0ならば右下がりのグラフになる.bは切片を表わす. |
(3) 2次関数 ・ y = ax2 (中学校で習う) a>0ならば下に凸のグラフになり,a<0ならば上に凸のグラフになる. ・ y = a(x −p)2+q (高校で習う) はy = ax2をx軸の正の向きにp,y軸の正の向きにqだけ平行移動したもので,頂点の座標は (p,q) になる. ・ 一般の2次関数y = ax2+bx + cと2次関数の標準形 y = a(x −p)2+qは,お互いに他方に変形できる. ・ 2次関数y = a(x −p)2+qは, a>0のときx=pにおいて最小値qをとる. a<0のときx=pにおいて最大値qをとる. ※ 自然現象や社会現象において人間が最も関心を持っている最大値や最小値が存在するところが,2次関数の特徴. ※ 1次関数や2次関数は,中学校,高校で習ったものであるが,微分や微分方程式において微小区間における近似式を考えるときには,ほとんどの問題がこれらで解決でき,基本的な関数となっている. |
※ 2次関数のグラフは,下に凸(谷形)または上に凸(山形)の放物線になる. (2次関数の例) A版の用紙において,横(ここでは短い方の辺とする)の長さをxとすると,縦の長さyはy=x,面積Sは S=xy=x2となるから,面積Sは横の長さxの2次関数で表せる. |
◇写像,関数と対応◇[記号と用語]以下においては,集合Aの要素に対して,集合Bの要素が2つ以上対応しているようなもの(多価関数という)は考えず,集合Aの要素に対して,集合Bの要素が1つ対応する場合のみを扱う.○ 集合Aの任意の要素aに対して,集合Bの要素bが「ただ一つ定まる」(存在かつ一意)とき,この対応を写像という. ○ 集合Aから集合Bへの写像fは ○ 写像f:A→Bにおいて,Aの要素aにBの要素bが対応しているとき,bを像といい,aを原像という. ○ 写像f:A→Bにおいて,Aを定義域という.変数xが集合Aのすべての値をとって変化するとき,集合Bのうち像となる値の全体を値域という. ○ 写像f:A→Bにおいて,値域が集合Bの全体となっているものをBの上への写像という.(全射ともいう.) 上への写像となるための必要十分条件は, 「 Bの任意の要素bに対して,f(a)=bとなるAの要素a が定まる 」ことである. ○ 写像f:A→Bにおいて,Aの異なる要素にはBの異なる要素が対応するものを1対1の写像という.(単射ともいう.) 1対1の写像となるための必要十分条件は, ○ 上への写像であって,かつ,1対1の写像となっているものを上への1対1の写像という.(全単射ともいう.) 上への1対1の写像となるための必要十分条件は, 「 Bの任意の要素bに対して,f(a)=bとなるAの要素aがただ1つ定まる 」ことである. |
■ ここでは多価関数などは考えていない. ■ 1対1の写像 1対1の写像でない例: f:R→Rの写像(関数) そこで,この写像(関数)f(x)=x2は1対1の写像(関数)ではない. |
問 次のグラフによって,集合Aの要素に集合Bの要素を対応させるとき,この対応は次のうちどれに該当するか.(正しい選択肢をクリックせよ)(なお,例えば,「1対1の上への写像」の場合,「写像」にも「1対1の写像」にも,「上への写像」にも該当するが,最も狭い範囲で「上への1対1の写像」と答えるものとする.他も同様.) |
◇1変数関数と多変数関数◇独立変数が1個の関数を1変数関数という.1変数の関数は,1つの独立変数xの値に対して従属変数yの値が決まり,y=f(x)の形式にまとめることができる. 1変数の関数では,上に述べた1次関数,2次関数の他,指数関数,対数関数,三角関数などが自然現象,社会現象を研究する上でよく登場する. 1. 指数の爆発 (小話1) 日本の国内法では極端な高利貸しは,法律で禁止されているが,闇世界では窮状に乗じて暴利をむさぼる者がいると言われている.トイチとは10日で1割の利息を取る闇の高利貸しを言う.そこで,このトイチからある日1円を借りたとき,10年後に何円の借金となっているか試算してみると: 10日後=1+0.1=1.1円 20日後=1.1+1.1×0.1=1.21=1.12円 30日後=1.21+1.21×0.1=1.331=1.13円 ・・・ 100日後=1.110=2.593円 ・・・ 500日後=1.150=117.39円 ・・・ 1000日後1.1100=13780.6円 ・・・ 10年後=3650日後=1,283,305,580,313,380=1283兆円 となり,日本の国家予算の何年分も必要となる. (log101.1365=15.1となって16桁の数となることが,確かめられる.) (*桁数の求め方↓) (小話2) 豊臣秀吉の時代に「曽呂利新左衛門」という人がいて,あるとき,秀吉から何でもほしいものをもらえることになった.そこで新左衛門は100畳の畳を示して,1日目には1つの畳に1粒の米を,次の日には隣の畳に2粒の,さらに次の日にはその隣の畳に4粒の米を,・・・というように2倍ずつ米粒を置いてもらえばこれをいただきますと言ったという. 初めは少なく見えるが,1+2+22+23+・・・299=2100-1個の米粒は,途方もなく多い.2を100乗もすると日常生活で使わないような桁外れの数字ができてしまう. 1粒の米が0.02g=0.00002kg=0.00000002tとすると, 0.00000002×(2100-1) ここで 210=1024≒1000,2100=(210)10=(103)10=1030として概算すると,少なめに見積もって 2×10-8×1030=2×1022t 今日の生産力でも世界全体で米の生産高は,年間約6億=6 0000 0000tと言われており,はるかに及ばない.(右上に続く→) |
(→続き) 問 (小話2)において,畳50畳であれば秀吉は合計何トンの米を渡さなければならなかったか.米1粒を0.02gとして概算で示せ. Check 0.00000002×(1+2+22+23+…+249) =0.00000002×(250−1) ≒2×10-8×250≒2×10-8×(210)5 =2×10-8×10005=2×107だから 約2000万t |
(小話3) 幼い子には知り合いが少なく,有名な政治家には知り合いが多いが,ここでは誰でも100人の知り合いがいるものとする.また簡単にするために,知り合いを友達と言い換える.このとき,世界中どの2人をとっても,どちらか一方から,友達の友達の友達を選び,他方からも,友達の友達を選べば,同じ人になることを示すことができる. すなわち,ある人の友達は100人あり,こちらから3回,先方から2回考えると,合計5ステップある.これは,こちらから100倍ずつの5ステップを考えても同じだから,合計1005=100 0000 0000=100億人に及ぶ. ところが世界の人口は約66億人といわれており,100億もあれば世界の人口をカバーできるので5ステップあれば世界中の誰とでもつながる. (もちろん,6人家族で閉じているような短いルートもあるが,遠方に到達する長いルートが少なくとも1つは存在するという意味である.ただし,重なりは無視する.) そこで,一方の端を自分として,他方の端を「アメリカ大統領」としても,また「ローマ法王」としても,友達の友達の友達は,友達の友達だと言っても,相手が同時代の人なら,ほら吹きとはならない. (小話4) マラカイトグリーンと呼ばれる緑色の薬品は,主に観賞魚の皮膚病の治療に用いられるが,食用魚に用いることは禁止されている. さて,この薬品は原液を25万倍に薄めて用いることになっている.では,どのようにして25万倍に薄めるか.・・・まず,1mLの原液に水を加えて500mLにすると,これで500倍に薄まる.次に,そのできた液のうち1mLだけを取り出して,これに水を加えて500mLにすると,2回の操作で500×500=250000となり,500mLのビーカーと1mLの小さじがあれば25万倍に薄めることができる. |
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問 食塩58gの中には,6×1023個の塩化ナトリウムの分子が含まれる.食塩58gを500mLの水に溶かしたものを食塩水の原液とするとき,(小話4)の要領で薄めていき,塩化ナトリウムの分子がちょうど1個含まれる液体を作るには,何回薄めればよいか.(実際には,薄めるのに用いる水[それ自体が全く塩分を含まない水]を入手することは難しく,よくかき回して均一な濃度にするのも難しいが,ここでは理屈通りに実験が進むものとして試算してみよ.) Check 500n=6×1023 より n=log5006×1023≒8.7 だから 9回 |
2. 自然対数の底,指数関数,対数関数 (1) 次の極限値により自然対数の底eを定義する.
(nは整数) (この極限値は約2.71828...)
このとき,次の性質が成り立つ.1) (nは整数) 2) (xは実数) 3) (hは実数,底はe) 4) (hは実数) 6) → (小話) なるべく有利に利息を得るには 以下のような条件で預金の利息を有利に得る方法を考える. 最近では同一銀行でも預金の出し入れに手数料が必要な場合もあるが,ここでは手数料は考えないものとする.単純に1年間預けた場合,元金1万円+利息1万円で元利合計2万円となる. しかし,半年後に引き出した場合,利息は半分になるので,元金1万円+利息0.5×1万円で,元利合計1.5万円となり,これをもう一度預け入れると,残り半年間1.5万円を預けるので,元金1.5万円+利息1.5×0.5万円,元利合計は1.5+1.5×0.5=1.52=2.25万円となり,単純に1年間預けたときと比べて有利になっている. そこで,さらにもっと細かく出し入れすることにし,4か月(1/3年)ごとに出したり入れたりすると,4か月目には1+1/3万円出して直ちに預け,8か月目には,(1+1/3)+(1+1/3)*1/3=(1+1/3)2万円を出して直ちに預け直すと,1年目には(1+1/3)3=2.37万円となる. このようにして,入れたり出したりを小刻みに行うほど有利になるので,限りなく細かく財産管理を行い,1秒ごとに出し入れすることまで考えると,1万円の元金の運用で一財産稼げるかのように思われるが,果たしてどうなるか. 1年間をn等分して出し入れすることにすれば,1回について期間は年なので元利合計が倍になることに注意すると,これをn回繰り返すことにより倍となる.そこで,限りなく細かく分割して出し入れすると, この式の値は,nが大きくなるにつれて増加する数列となっているが,nが大きくなってくると増え方が緩くなり,一定の値に収束する.この値が 2.71828...で記号eで表わされる. |
(→続き) (eの定義を用いた,1)〜6)証明) 1)←: 2)←: 左下のグラフのようには単調増加関数で, nを整数として,n≦xのとき, だから がいえる. 1)から,同様にして がいえる. そこで,とおくと, の両方がいえるから,2)が成り立つ.(右極限値と左極限値が存在してそれらが一致するとき,極限値はその一致した値となる.) 3)←: まず,対数関数はその定義域において連続なので, のとき, となることに注意する. 次に, ここで2)により, であるから,対数関数の連続性により 4)←: とおくと (底はe) となる. このとき,ならばだから(∵) は3)により1となる. 5)←: は4)によりexとなるから, y=ex→y’=exが成り立つ. 6)←: 問 次の極限値を求めよ.(選択肢から選べ.) |
桁数の非常に大きな数はその全部を求めることが難しいときでも,桁数は10を底とする対数:常用対数で求めることができる. 常用対数については,次の性質が成り立つ.(解説→※) n≦log10X<n+1のとき,Xの整数部分はn+1桁である.
例 log10X=0.002ならXは1以上10未満の数となる. log10X=1.502ならXは10以上100未満の数となる. log10X=2.987ならXは100以上1000未満の数となる. .... log10X=8.0123ならXは1億以上10億未満の数となる. |
(※)
log101000=3 ,log1010000=4 だから,1000≦X<10000ならば3≦log10X<4となり,4桁の整数の常用対数の整数部分は3になる. 逆に,log10Xがnならば元の数Xは整数部分がn+1桁になる. 例 2100の桁数を求めるためには,その常用対数を計算すればよく,log102100=100 log102=100×0.3010=30.1 だから,2100は31桁の整数だと分かる. |
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(2) 指数計算
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(3) 対数計算
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問 |
3. 三角関数 三角関数の性質については,高校以来さまざまな側面から学んでいるが,ここでは「周期,振幅」「偶関数,奇関数」「第2次導関数の特徴」について,補足説明する. (1) 周期,振幅 y=sin xのグラフは右図のようになる.山の高さ(正の値)を振幅といい,山から山(または谷から谷)までの長さを周期という. 一般に,任意のxについて,
f(x+p)=f(x)が成り立つ最小の正の数pを基本周期という.(基本周期のことを単に周期ということがある.)基本周期pの任意の整数倍np(nは整数)は周期となる. ∵ f(x+p)=f(x)→f(x+2p)=f((x+p)+p))=f(x+p)=f(x) 同様にして,f(x+3p)=f(x)などが示され,一般に f((x −p) +p)=f(x −p)となるから,f(x)=f(x −p) 一般に,f(x)=f(x −np)も成り立つ. |
○ y=sin xの基本周期は2πである. →sin(x+2π)=sin x →sin(x+4π)=sin x →sin(x+6π)=sin x ・・・ →sin(x+2nπ)=sin x が成り立つ. ○ y=cos xの基本周期も2πである. →cos(x+2π)=cos x ・・・ →cos(x+2nπ)=cos x が成り立つ. ○ y=tan xのグラフには山や谷はないが,同じ形が繰り返される最小の正の数はπで,周期はπとなる. |
y=sin nx,y=cos nxの(基本)周期は,
∵ sin(n(x+p))=sin nxすなわちsin(nx+np)=sin nxy=tan nxの(基本)周期は, となる最小の正の数pを求めると,np=2πより, y=cos nx,y=tan nxについても同様. ○ y=sin 2xの周期はπ, y=sin 3xの周期は, y=sin 4xの周期は,・・・ のようにnを大きくすると,周期は短くなることに注意. 逆に, y=sinの周期は4π, y=sinの周期は6π, y=sinの周期は8π, ・・・ のようにnを小さくすると,周期は長くなることに注意. ※ いろいろな周期の三角関数の和として作られる関数は,繰り返し模様となる.右の2つの図は各々 y=sinx+sin10x,y=sinx+sin5x+sin25xのグラフで,短い周期と長い周期が組み合わされていることが分かる. 逆に,繰り返し模様となっているグラフは, 細かな模様を再現するには,多くの係数a , b , c , …を要するが,そこそこの精度で再現するには少ない個数の係数a , b , c , …でよい.(JPEG画像の圧縮比(画質)は,この係数を幾つ使うかということに関係している.) |
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例 右図のような立体で鼻を通る断面(赤で示した線)を三角関数の1次結合(定数倍とそれらの和)で近似することを考える. (0≦x≦2πの区間でxの関数として表わす.) 右図下において,赤で示した曲線は 青で示した曲線は,定数項とy=cos xだけで近似したときのグラフ |
(2) 偶関数,奇関数 1) 任意のxについて
f( −x)=f(x) が成立する関数f(x)は偶関数と呼ばれ,y=f(x)のグラフはy軸に関して対称となる. 2) 任意のxについて f( −x)= −f(x) が成立する関数f(x)は奇関数と呼ばれ,y=f(x)のグラフは原点に関して対称となる. 右のグラフから,次のことが分かる. ○ sin( −x)= −sin xが成り立つからsin xは奇関数で,y=sin xのグラフは原点に関して対称となる. ○ cos( −x)= cos xが成り立つからcos xは偶関数で,y=cos xのグラフはy軸に関して対称となる. ○ tan( −x)= −tan xが成り立つからtan xは奇関数で,y=tan xのグラフは原点に関して対称となる.
ア)整数の積に関する性質は異なり,次の性質が成り立つ:
(証明)奇関数×奇関数=偶関数 奇関数×偶関数=奇関数 偶関数×偶関数=偶関数 イ) 任意の関数f(x)は,奇関数と偶関数の和で表わすことができる. ア) f(x), g(x)を奇関数とすると,f(−x)=−f(x), g(−x)=−g(x)が成り立つ. このとき,p(x)=f(x)g(x)で定義される関数は, h(−x)=f(−x) g(−x)={−f(x)}{−g(x)}=f(x)g(x)=p(x)となるから,p(x)は偶関数となる. f(x)が奇関数,g(x)が偶関数のとき,f(−x)=−f(x) , g(−x)= g(x)だから,q(x)=f(x) g(x)で定義される関数は, q(−x)=f(−x) g(−x)={−f(x)}{ g(x)}=−f(x)g(x)=−q(x)となるから,q(x)は奇関数となる. イ) 任意の関数f(x)に対して ここで, |
問 問 次の関数を偶関数と奇関数の和として表せ.) Check s(x)=(x+cos x)(1+tan x) 左のイ)の考え方で形式的に作る方法もあるが,項数が少ないので,次のように「目で見て」分けてもよい. s(x)=x+x tan x+cos x+sin x=(xtan x+cos x)+(x+sin x) (参考) ア)で示した,奇×奇=偶,奇×偶=奇,偶×偶=偶 の性質は,次の変形から分かるように,指数の和に関する性質に対応している. 奇×奇 : x奇数×x奇数=x奇数+奇数=x偶数 奇×偶 : x奇数×x偶数=x奇数+偶数=x奇数 偶×偶 : x偶数×x偶数=x偶数+偶数=x偶数 |
(3) 第2次導関数の特徴 (sin x)’=cos x (cos x)’=−sin x となるから,(sin x)”=−sin x が成り立つ. 同様に (cos x)”=−cos x が成り立つ. そこで,y=sin x , y=cos x は y”=−yという2階微分方程式の解となっていることが分かる. また,(sin kx)’=kcos kx (kcos kx)’=−k2sin kx となるから,(sin kx)”=−k2sin kx が成り立つ. 同様に (cos kx)”=−k2cos x が成り立つ. そこで,y=sin kx , y=cos kx は y”=−k2yという2階微分方程式の解となっていることが分かる. 一般に,単振動のように「変位に比例する逆向きの力が働く」運動では,方程式の解として三角関数(sin kt , cos ktなど)が登場する. |
バネ定数k,質量mの単振動の周期は, となる.(kが大きいほど速く,mが大きいほど遅くなる.) |
◇多変数関数の例◇多変数関数の例として,以下において2変数関数について説明する.1. 2変数の1次関数 ○ リンゴx個とミカンy個を買って箱につめてもらう場合,その価格は, |
○ もっと多くの品物を買うような一般の買い物や実際の社会活動では,n個の変数x1,x2,x3,…,xnを用いて, と表せるものが多い. |
○ z=ax+by+cのように独立変数x ,yの1次式で従属変数zが表わされる図形は3次元空間における平面になる. 右の図はxyz空間における平面z=ax+by+cの概形を描いたものである.(実際にはこの平面は無限に広がっているが,見やすくするためにx , y , z>0の部分を図示している.) ア) x=y=0を代入すればz=cとなることから,この平面とz軸との交点の座標は,(0 , 0 , c)になることが分かる. イ) 一般に,座標軸(x軸,y軸,z軸)に垂直な平面の方程式は各々x=k , y = l , z = mの形で表わされ,これらの平面は座標軸によって垂直に串刺しされたような形になっている. ウ) z=ax+by+cをx軸に垂直な平面x=kで切った切り口の方程式は,z=ak+by+c=by+(ak+c)となり,独立変数yの1次関数である直線となる. (直線z=by+(ak+c) における直線の傾きbは上の例ではミカンの単価となっている.) 同様にして,z=ax+by+cをy軸に垂直な平面y=lで切った切り口の方程式は,z=ax+bl+c=ax+(bl+c)となり,独立変数xの1次関数である直線となる. (直線z=ax+(bl+c) における直線の傾きaは上の例ではリンゴの単価となっている.) z=ax+by+cをz軸に垂直な平面z=mで切った切り口の方程式は,m=ax+by+c → ax+by=c−mとなる.この形で作られた図は「等高線」と呼ばれ,立体を図示するときによく用いられる. ※ 医療分野での,CTやMRIによる断層画像は,幾つもの切り口を用いて立体全体を視覚化している. |
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問 京都市右京区には双岡(ならびがおか)と呼ばれる小高い丘があって,ここには徒然草の作者 吉田兼好の庵があったと言われている. この丘は,西から見ると右図上のように北の丘が少し高い.また,上から見ると右図下のような形をしている. この山の立体構造を説明するために,東西にx軸,南北にy軸を選び,z軸を高さとして,xyz軸に垂直な断層画像各々数個を用いてこの山の形を説明せよ. 西側から見た遠景 |
2. 2変数の2次関数 2変数の2次関数は,一般に (1) z=Ax2+By2 (A>0 , B>0) 下に凸の楕円放物面と呼ばれる(右図) ※ 右の図1は-1≦x≦1 , -1≦y≦1の区間において,z=x2+y2の曲面をExcelグラフを用いて等高線表示したものである.(着色は初期設定から変えてある.) (2) z=−Ax2−By2 (A>0 , B>0) 上に凸の楕円放物面と呼ばれる(右図) ※ 右の図2は-1≦x≦1 , -1≦y≦1の区間において,z=−x2−y2の曲面をExcelグラフを用いて等高線表示したものである.(着色は初期設定から変えてある.) (3) z=Ax2−By2または,z=−Ax2+By2 (A>0 , B>0) 双曲放物面と呼ばれる(右図) ※ 右の図3は-1≦x≦1 , -1≦y≦1の区間において,z=x2−y2の曲面をExcelグラフを用いて等高線表示したものである.(着色は初期設定から変えてある.)
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図1 |