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◇2次関数による近似(1変数関数)

◇要点◇ ※ 近似式に関する記述は→第2章

xaにおける関数f(x)の振舞い

0次近似:f(x)f(a)

1次近似:f(x)f(a)+f’(a)(x−a)

2次近似:f(x)f(a)+f’(a)(x−a)+(x−a)2






○ 特に,x0のとき

0次近似:f(x)f(0)

1次近似:f(x)f(0)+f’(0)x

2次近似:f(x)f(0)+f’(0)x+x2



※ 近似式の身近な例
f(a)=1f’(a)=2f ”(a)=6x−a=0.1のとき,
f(x)1+2·0.1+·0.12=1.23
f(a)は整数部分に対応
f’(a)(x−a)は小数第1位に対応
(x−a)2は小数第2位に対応している.


※ 近似式の身近な例
f(0)=1f’(0)=2f ”(0)=6x=0.01のとき,
f(x)1+2·0.01+·0.012=1.0203
f(0)は整数部分に対応
f’(0)xは小数第2位に対応
x2は小数第4位に対応している.

◇極値の判定◇

 以下においては,関数f(x)として滑らかな関数,すなわち,f’(x)が連続な関数のみを取り扱う.
 第4章では,x=a前後におけるf’(x)符号の変化によって極値の判定を行った:
○極値f ’(x)=0でかつf ’(x)符号が変化する
f ’(x) の符号が正から負へ変化:極大値
f ’(x) の符号が負から正へ変化:極小値
f ’(x)=0でもf ’(x)符号が変化しないとき
極値でない



 次のようにx=aにおけるf ”(x)の値f ”(a)で調べることもできる:
f ’(a)=0のとき,
f ”(a)>0x=aで極小値をとる.
f ”(a)<0x=aで極大値をとる.
f ”(a)=0x=aで極値かどうかこれだけでは分からない.
※ 2次導関数が極大極小であることに注意
(証明)
 2次近似:f(x)f(a)+f’(a)(x−a)+(x−a)2
の式において,f’(a)=0のとき,
f(x)−f(a)(x−a)2
となるから,
(1)f’(a)=0, f ”(a)<0のとき,xaのときf(x)< f(a)となる.
(2)f’(a)=0 , f ”(a)>0のとき,xaのときf(x)> f(a)となる.
(3)f’(a)=0 , f ”(a)=0のとき,これだけでは分からない.
極大値
x a
f ’(x) 0
f(x) f(a)
極小値
x a
f ’(x) 0
f(x) f(a)
極値でない
x a
f ’(x) 0
f(x) f(a)


極大値
x a
f ’(x) 0
f ”(x)  
f(x) f(a)
極小値
x a
f ’(x) 0
f ”(x)
f(x) f(a)
これだけでは分からない
x a
f ’(x) 0
f ”(x) 0
f(x) ? f(a) ?

これだけ(第2次導関数まで)では分からないとは,「分からない」ということではなく,さらに高次の導関数を用いれば判断できる.

 右の表において,ア)では,f’(a)=0 , f ”(a)=0となっており第2次導関数までだけでは極値かどうか判断できない.

 まず,符号の変わり目ではわずかな値の変化でも符号が変るが,x=aにおいて符号が正のとき,その近くにおいては,符号が急に変化するわけではないことに注意する.
○ 右の表において,f ”(x)という関数の導関数はf(3)(x)で,増加して(f(3)(x)>00になる(f ”(x)=0)のだから,それまではf ”(x)は負であったといえる.また,0から増加するのだから,その後は正であるといえる.
 以上により,f ”(x)の符号が定まる.
○ 同様にして,f’(x)という関数の導関数はf ”(x)で,減少して(f ”(x)<00になる(f’(x)=0)のだから,それまでは正(f’(x)>0).また,0から増加するのだから,その後は正であるといえる.
 以上により,f’(x)の符号が定まる.
○ 以上により,f(x)は増加→(休み)→増加となるから,x=0のときf(x)は極値ではないことが分かる.

※ 右の表ウ)では,第3次導関数まで符号が0で第4次導関数で符号が正になる点x=0において,極小値となる例を示している.考え方は同様である.
ア)f(x)=x3
x 0
f ’(x)=3x2 0
f ”(x)=6x 0
f(x) ? 0 ?
イ)f(x)=x3
x 0
f(x) 0
f ’(x)=3x2 0
f ”(x)=6x 0
f(3)(x)=6 + +

ウ)f(x)=x4
x 0
f(x) 0
f ’(x)=4x3 - 0 +
f ”(x)=12x2 + 0 +
f(3)(x)=24x - 0 +
f(4)(x)=24 + + +


  関数f(x)=exsin xx=−において極値をとるかどうか調べよ.

(答案)
f’(x)=exsin x+excos x=ex(sin x+cos x)
f ”(x)=ex(sin x+cos x)+ex(cos x−sin x)=2excos x
f’(−)=0
f ”(−)>0により,x=−において極小値をとる.
 問題
f(x)=2sin x+cos2x0<x<π)の極値を調べた.正しいものを選べ.
(答案)
f’(x)=2cos x−2sin 2x
f ”(x)=−2sin x−4cos 2x
f’(x)=02cos x−2sin 2x=2cos x−4sin x cos x
=2cos x(1−2sin x)=0
x=,x=,x=

ア)x=のとき,f’()=0f ”()<0だから,

    極大極小極値でない
イ)x=のとき,f’()=0f ”()>0だから,

    極大極小極値でない
ウ)x=のとき,f’()=0f ”()<0だから,

    極大極小極値でない

◇2変数関数の近似◇

◇要点◇
(x, y)(a, b)における関数f(x, y)の振舞い

0次近似:
f(x, y)f(a, b)・・・(1)
1次近似:
f(x, y)f(a, b)+fx(a, b)(x−a)+fy(a, b)(y−b)…(2)
2次近似:
f(x, y)≒f(a, b)+fx(a, b)(x−a)+fy(a, b)(y−b)
+{ fxx(a, b)(x−a)2+2fxy(a, b)(x−a)(y−b)
+fyy(a, b)(y−b)2}
・・・(3)

○ 特に,(x, y)(0, 0)のとき

0次近似:
f(x, y)f(0, 0)
1次近似:
f(x, y)f(0, 0)+fx(0, 0) x + fy(0, 0) y
2次近似:
f(x, y)≒f(0, 0)+fx(0, 0) x +fy(0, 0) y
+{ fxx(0, 0) x2+2fxy(0, 0) xy+fyy(a, b) y2}
1次近似までについては,第2章で述べた.

2次近似の式を
f(x, y)≒f(a, b)+fx(a, b)(x−a)+fy(a, b)(y−b)+A(x−a)2+B(x−a)(y−b)+C(y−b)2 ・・・(4)
とおくと,A, B, Cは次のようにして求められる:

(4)の両辺をxで偏微分すると,
 fx(x, y)≒fx(a, b)+2A(x−a)+B(y−b) ・・・(5)
関数fx(x, y)に(2)を適用すると
 fx(x, y)fx(a, b)+fxx(a, b)(x−a)+fxy(a, b)(y−b) ・・・(6)
(5)(6)を比較すると,2A=fxx(a, b), B=fxy(a, b)

同様にして, (4)の両辺をyで偏微分すると,
 fy(x, y)≒fy(a, b)+B(x−a)+2C(y−b) ・・・(5)
関数fy(x, y)に(2)を適用すると
 fy(x, y)fy(a, b)+fxy(a, b)(x−a)+fyy(a, b)(y−b) ・・・(6)
(5)(6)を比較すると,B=fxy(a, b), 2C=fyy(a, b)

以上から(3)が得られる.

◇2変数関数の極値◇

 2変数関数の極値を,増減表を作成して調べる方法については第4章で学んだ.ここでは,第2次偏導関数の符号によって2変数関数の極値を調べる方法を学ぶ.
 すなわち,2変数関数f(x, y)が点(a, b)において極値をとるためには,第1次偏導関数がfx(a, b)=fy(a, b)=0を満たすことが必要条件であるが,この条件を満たしても極値でない場合が含まれる.そこで,第1次偏導関数が fx(a, b)=fy(a, b)=0を満たす点が,さらにどのような条件を満たせば極値となるかを調べる.
 上記(3)により,
f(x, y)≒f(a, b)+fx(a, b)(x−a)+fy(a, b)(y−b)+{ fxx(a, b)(x−a)2+2fxy(a, b)(x−a)(y−b)+fyy(a, b)(y−b)2}
であるが,fx(a, b)+fy(a, b)=0の場合を調べているから,
f(x, y)≒f(a, b)+{ fxx(a, b)(x−a)2+2fxy(a, b)(x−a)(y−b)+fyy(a, b)(y−b)2}
 そこで,f(x, y)−f(a, b)={ fxx(a, b)(x−a)2+2fxy(a, b)(x−a)(y−b)+fyy(a, b)(y−b)2}が,つねに正ならばf(a, b)は極小値,つねに負ならばf(a, b)は極大値といえる.
f(x, y)−f(a, b)= A(x−a)2+B(x−a)(y−b)+C(y−b)2
符号を調べると,次のことが分かる.
 ここで,A=fxx(a,b), B=fxy(a,b), C=fyy(a,b)である.

◇要点◇
(I)B2−4AC<0のとき極値となる.
   ア)A>0,B2−4AC<0のとき,極小
   イ)A<0,B2−4AC<0のとき,極大
(II)B2−4AC>0のとき極値でなく,鞍点となる.
(III)B2−4AC=0のとき,これだけでは分からない

※ 右の結果をB2−4ACの符号によって分類したものがこの要点である.

 上の結果を用いると,2変数関数の極値は次のようにまとめることができる.
H(x, y)はヘッセ行列と呼ばれる.
◇要点◇

とおき,
行列H(x, y)の固有値を,p,qとすると,
(I)p,qが同符号ならば,f(x, y)(a, b)で極値をとる.
   p >0,q >0のとき,極小値
   p <0,q <0のとき,極大値
(II)p,qが異符号ならば,f(x, y)(a, b)で極値とならず鞍点となる.
(III)pq=0のとき,f(x, y)(a, b)で極値かどうかこれだけでは分からない.
(解説) 次のように変形する.
i)A0のとき
F=A(x−a)2+B(x−a)(y−b)+C(y−b)2とおくと
F=A {(x−a)2+(x−a)(y−b) }+C(y−b)2

=A {(x−a)+(y−b) }2(y−b)2+C(y−b)2

=A {(x−a)+(y−b) }2(y−b)2
だから,点(a, b)の近くで
A>0, B2−4AC<0ならばF0(等号は(x, y)=(a, b)のとき)
A<0, B2−4AC<0ならばF0(等号は(x, y)=(a, b)のとき)
0B2<4ACのときは,A0とはならない.)

B2−4AC>0ならばAは符号が逆になり,Fは正の値も負の値もとる:極値でなく,鞍点となる.

B2−4AC=0ならばF=A {(x−a)+(y−b) }2となり,Aの符号によって変り,これだけでは分からない.

ii)A=0のとき
F=B(x−a)(y−b)+C(y−b)2=(y−b){B(x−a)+C(y−b)}
a)B0のときy−bの正負に応じて,Fは正負の値をとる.
b)B=0のとき,F=C(y−b)2となり,Cの符号によって変り,これだけでは分からない.

(解説)
f(x, y)−f(a, b)={ fxx(a, b)(x−a)2+2fxy(a, b)(x−a)(y−b)
+fyy(a, b)(y−b)2}

=A(x−a)2+B(x−a)(y−b)+C(y−b)2
とおくと
fxx(a, b)=2A, fxy(a, b)=B, fyy(a, b)=2C
だから

は,

と書ける.すなわち,固有方程式は,
f(z)=z2−2(A+C)z+4AC−B2=0
f(z)={ (z−(A+C) }2−(A+C)2+4AC−B2=0
f(z)={ (z−(A+C) }2{ (A−C)2+B2}=0

となり,右のように2次関数のグラフとz軸との交点を見ると,極値かどうか調べることができる.
4AC−B2>0のとき(B2−4AC<0のとき)
0B2<4ACは正だから,A, Cは同符号
<===> 2つの正の固有値p,qをもつとき,上記(I)ア)より
   極小となる.
<===> 2つの負の固有値p,qをもつとき,上記(I)イ)より,
   極大となる.

4AC−B2<0のとき(B2−4AC>0のとき)
<===> 固有値が異符号となるとき,上記(II)より鞍点となる.

例1
f(x, y)=x3−3xy+y3の極値を調べよ.
(答案)
fx=3x2−3y, fxx=6x, fyx=−3,fy=−3x+3y2, fyy=6y
だから,

連立方程式fx=3x2−3y=0,fy=−3x+3y2=0の解は
(0, 0), (1, 1)の2個
(1)
(0, 0)のとき,
の固有方程式は,

固有方程式の解は,z2−9=0より,z=±3
異符号だから,(0, 0)では極値を持たず鞍点となる.

(2)
(1, 1)のとき,
の固有方程式は,

固有方程式の解は,z2−12z+27=0より,z=3, 9
正の2つの解をもつから,(1, 1)極小となり,
極小値はf(1, 1)=−1
例2
f(x, y)=sin x sin y<x, y<)の極値を調べよ.
(答案)
fx=cos x sin y, fxx=−sin x sin y,
fyx=cos x cos y, fy=−sin x cos y, fyy=−sin x sin y

だから,

連立方程式fx=cos x sin y=0,fy=sin x cos y=0の解は
(0, 0)
このとき,
の固有方程式は,

固有方程式の解は,z2−1=0より,z=±1
異符号だから,(0, 0)では極値を持たず鞍点となる.
極値はない.

 問題 (半角数字=1バイト文字で答えよ)
(1) f(x, y)=x3+y3−6xy+1の極値を調べよ.
(答案)
偏導関数はfx=3x2fy=3y2
fxx=fxy=fyy=
となり,連立方程式fx=0fy=0の解は(0, 0), (2, 2)



ア)(0, 0)において固有方程式
z2−36=0の解は,z=±6

だから(0, 0)において
極大値をとる極小値をとる鞍点となる
第2次偏導関数まででは極値を判別できない

イ)(2, 2)において固有方程式
z2−24z+108=0

 の解は,z=6, 18
だから(2, 2)において
極大値をとる極小値をとる鞍点となる
第2次偏導関数まででは極値を判別できない






秋の奈良
(2)f(x, y)=(x2- 2x)(y2−2y)の極値を調べよ.
(答案)
偏導関数はfx=()(y2−2y)fy=(x2−2x)()
fxx=(y2−2y)fxy=(2x−2)(2y−2)
fyy=(x2−2x)となり,
連立方程式fx=0fy=0の解は(0, 0), (1, 1), (2, 2)
ア)(0, 0)において

固有方程式は,
=0

z2−16=0 の解は,z=±4
だから(0, 0)において
極大値をとる極小値をとる鞍点となる
第2次偏導関数まででは極値を判別できない

イ)(1, 1)において


固有方程式は,
=0


(−2−z)2=0 の解は,z=2, 2
だから(1, 1)において
極大値をとる極小値をとる鞍点となる
第2次偏導関数まででは極値を判別できない

ウ)(2, 2)において



固有方程式は,
−z
−z
=0

z2−4=0 の解は,z=±2
だから(2, 2)において
極大値をとる極小値をとる鞍点となる
第2次偏導関数まででは極値を判別できない

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