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■微分係数と導関数
○ はじめに

 平均変化率極限値微分係数f(a)で,微分係数の定義における定数aを変数 xに変えたものが導関数(微分)f(x)なので,右の流れ図に沿って解説する.
○ 平均変化率
 中学校で「変化の割合」と呼ばれるものは,高校では「平均変化率」と呼ばれる.

( 平均変化率 ) =
(yの増分)
(xの増分)

 一般に,関数 y = f(x) の区間 axb における平均変化率は

で定義される.
(1) y = x2 の区間 1≦x≦3 における平均変化率
 ( xの増分 ) =3−1 = 2
 ( yの増分 ) =32−12=8
だから
 ( 平均変化率 )==4
(2) y =−3x + 1の区間 0≦x≦4 における平均変化率
 ( x の増分 )=4−0=4
 ( y の増分 )=−11−1=-12
だから
 ( 平均変化率 )==−3

■即答問題■

 次の各関数の与えられた区間における平均変化率を求めよ.(正しい選択肢をクリック)
(1) y =2x−1  (0≦x≦3)
[ 選択肢 ]  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
 
(2) y =x2  (0≦x≦4)
[ 選択肢 ]  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
 
(3) y =x3  (-1≦x≦2)
[ 選択肢 ]  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
 
(4) y =2x2+x  (-1≦x≦1)
[ 選択肢 ]  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
 

○ 極限値

(はじめに) 関数値と極限値 の違い
-----
右図 1)
のとき)
のとき)
で定義される関数で,関数値 f(1)=3 であるが,xが限りなく1 に近づいたとき f(x) 2 に近づく.
-----
右図 2)
のとき)
のとき)
で定義される関数で,関数値 g(1)=2 であるが,xが限りなく1 に近づいたとき g(x) 2 に近づく.
-----
右図 3)
のとき)
のとき)
で定義される関数で,関数値 h(1)=1 であるが,xが限りなく1 に近づいたとき h(x) 2 に近づく.
-----
以上の1)2)3)の違いから分かるように,xが限りなく1 に近づくときの f(x) の値(これを極限値という)は,関数値 f(1)とは無関係で,x1 でないときの1 付近の値で決まる.

(極限値の定義)
 関数 f(x) において,x a と異なる値をとりながら a に限りなく近づくとき, f(x) が一定の値 b に限りなく近づくとき, x a のときの f(x) 極限値b であるといい
または
と書く.

※ 「xaと異なる値をとりながら」という条件は次のようにはたらく.

x≠1のとき


は約分できて x + 1 となるので

 約分する前は代入できないが,約分後は単なる代入と同じ.
1)
2)
3)
1)
 関数値と極限値

2)
 関数値と極限値

3)
 関数値と極限値

※ 繰り返しになるが,
1)において, ということは,f(x)=2f(1)=2 ということではないことに注意
3)も同様
2)は,定義によって「たまたま」 g(1)=2 となっている.

※ 数学専攻の人が精密な証明をするときを除けば,「限りなく近づく」とは何かということに深入りせずに,直感的に理解するとよい.

 関数の極限については,次の公式の組合わせてできるものが求められればよい.

のとき
(Ⅰ)
(Ⅱ)
(Ⅲ)

例と答
(1)

(2)
(3)

■即答問題■

 次の極限値を求めよ.(正しい選択肢をクリック)
(1)
[ 選択肢 ] 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
 
(2)
[ 選択肢 ] 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
 
(3)
[ 選択肢 ] 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
 
(4)
[ 選択肢 ]  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
 

○ 不定形の極限
は,元の式のそのままの形でx=1を代入すると,
分母が0,分子も0の「0÷0の形」となる.
 このように,元の式に直接値を代入すると「0÷0形」になるものを不定形の極限という.

 不定形の極限は,見かけは不定の形をしているが,不定である原因を取り除けば,極限値は求まり結果は不定ではない.
 ここで重要となるのが,「xaと異なる値をとりながら」という条件で,
は,x1のときx−10だから,分母,分子をx−1で割ることができて,x+1となる.
※ 0÷0の形の式を不定形という.
(i) 数学で次の方程式は「解なし」「不能」となる.
 0x=3 (正しくない変形だが)  x =
 この形の式を「不能形」という.

(ii) 次の方程式は「任意の数」「不定」となる.
 0x=0 (正しくない変形だが)  x =
 この形の式を「不定形」という.

※ いわゆる「不定形の極限」には,0÷0形以外に,∞-∞形,0×∞形などがあるが,ここでは微分係数・導関数を理解する上で必要な0÷0形のみを取り上げる.
例と答・・・約分により分母,分子が0になる原因(因数)を取り除くところがポイント

(1)

(2)
(3)

(4)


■即答問題■

 次の極限値を求めよ.(正しい選択肢をクリック)

(1)
[ 選択肢 ]  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
 
(2)
[ 選択肢 ]  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
 
(3)
[ 選択肢 ]  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
 
(4)
[ 選択肢 ]  -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5
 

○ 微分係数の定義

 関数 y=f(x) の区間 axb における平均変化率は,
であるが,この区間の幅を限りなく0に近づけた極限
を関数 y=f(x)x=aにおける微分係数といい,f(a)で表わす.
 すなわち,
 f(a)は,次の形で定義することもできる.(約分などの計算は,こちらの方が簡単になる.)
※ 区間 axb の幅を限りなく0に近づけると

平均変化率  の式において,

分母,分子とも限りなく0に近づくが,平均変化率の極限値は0になるのでなく,上に述べたようにいわゆる不定形の極限となり,有限確定値となる.
 また,この極限値f (a)は点A(x=a)における接線の傾きとなる.
例1
 f(x) =x2のときx=1における微分係数f’(1)


または



例2
 f(x)=x3のときx=1における微分係数f’(1)



例3 [重要例題]
 f(x)=x2のときx=aにおける微分係数f’(a)



■短答問題■
(半角英数字で答えること)
 次の微分係数を定義に従って計算せよ.
(1) f(x)=2x+3のときf’(1)
 

(2) f(x)=3x2+4のときf’(0)
 

(3) f(x)=x2+x+2のとき f’(2)
 


○ 導関数(微分)の定義

 各々の定数aに対して定義される微分係数

を,aに対して微分係数f’(a)を対応させる関数と考えたものを導関数という.

 導関数f’(x)は,元の関数の微分とも呼ばれる.また,導関数を求めることを微分するという.


○ 導関数(微分)と微分係数の関係
 導関数が求まると,導関数にxの値を導入するだけで微分係数が求まるので,個々の定数aに対して f’(a)を求める煩雑な手続きは不要となる.
○ 導関数(微分)を表わす記号
 微分法は,ニュートンとライプニッツが別々に考え出したと言われており,微分を表わす記号もニュートンの記号とライプニッツの記号がある.各々長所があり,両方とも使われる.
 ニュートンの記号:y’f’(x)
 ライプニッツの記号:f(x)


 ライプニッツの記号は,Δy=f(x + h)−f(x),Δx=h として,
平均変化率をで表わすとき,導関数の定義を
の代わりに
と書くものとなっている.(単なる分数ではなく,極限を表わす記号なので, d で約分することはできない.)
例と答

 次の関数の導関数を求めよ.(次の関数を微分せよ.)また,与えられたxの値に対する微分係数を求めよ.

(1) f(x)=x2f’(1)




・・・(答)
x=1を代入するとf’(1)=2
(2) f(x)=x3f’(2)




…(答)
x=2を代入するとf’(2)=12

■短答問題■
(半角英数字で答えること)
 次の関数の導関数を定義に従って計算せよ.
(1) f(x)=2x2
= 

(2) y=−3x+4
= 

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