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== 近似式 ==
○ 接線の方程式

 点(a, b) を通り,傾き m の直線の方程式は
y−b =m(x−a) ・・・(1)
だから,曲線 y =f(x) 上の点 (a, f(a) )における接線の方程式は,(1)において,m=f’(a)b=f(a)とおいて
y−f(a) =f’(a)(x−a) ・・・(2)
もしくは
y=f(a)+f’(a)(x−a) ・・・(3)
 
 右図1のように,「接線のy座標」は,x=aのとき「曲線のy座標」と完全に一致するが,xa に近い値をとるときは,その近似値となっている.

 すなわち,
f(x)≒f(a)+f’(a)(x−a) ・・・(4)
x−a=h とおくと,(4)は,
f(a+h)≒f(a)+f’(a)h ・・・(5)
と書くこともできる.
図1
○ 1次の近似式
xa に十分近い値をとるとき,
f(x)≒f(a)+f’(a)(x−a) ・・・(4)
h0 に十分近いとき
f(a+h)≒f(a)+f’(a)h ・・・(5)
特に,a=0 のとき
f(x)≒f(0)+f’(0)x ・・・(6)
これらの式を関数 f(x)の1次の近似式という.

f(x)=(1+x)2 のとき
  f’(x)=2(1+x)だから,f’(0)=2
  x0に十分近い値をとるとき
  f(x)≒f(0)+f’(0)x=1+2x

正確な値,f(x)=(1+x)2=1+2x+x2 と比較すると,x=0.1 ならばx2=0.01 となり,その差はほとんど無視できるほど小さい.
例と答
(1) x≒0 のとき,f(x)=sin x の1次の近似式を求めよ.
(答案)
f (0)=0
f’(x)=cosx ,f’(0)=1
だから
f(x)≒0+1x=x
(2) x≒0 のとき,f(x)=の1次の近似式を求めよ. (答案)
f(0)=1

f’(x)=(1+x) ,f’(0)=
だから
f(x)≒1+x
(3) 1次の近似式を用いて,次の値の近似値を求めよ.
1.01−5
(答案)
f(x)=(1+x)−5 とおく,
f’(x)=−5(1+x)−6
x≒0 のとき,
f(x)≒f(0)+f’(0)x=1−5x
f(0.01)≒1−5×0.01=0.95
短答問題
(1) x≒0 のとき,f(x)=log(1+x) の1次の近似式を求め,これを利用してlog 1.01 の近似値を求めよ.
log 1.01≒ 

(2)
 x≒0 のとき,f(x)=tan x の1次の近似式を求め,これを利用してtanの近似値を求めよ.

ただし,π=3.1416 とし,結果は小数第3位まで求めよ.
tan 

(3)
 x≒0のとき,f(x)=の1次の近似式を求め,これを利用しての近似値を求めよ.(小数第3位まで)
 


○ 2次の近似式

 (5)式はh 0 に十分近いときh の1次式で近似式を表わしたものとなっている
f(a+h)≒f(a)+f’(a)h ・・・(5)
 目的に応じてさらに詳しい近似式がほしいときは,hの2次式,3次式,・・・と次数を高くしていくとより精度の高い近似式が得られる.

xaに十分近い値をとるとき,
f(x)≒f(a)+f’(a)(x−a)+ (x−a)2 ・・・(7)

h0に十分近いとき
f(a+h)≒f(a)+f’(a)h+h2 ・・・(8)
a=0 のとき
f(x)≒f(0)+f’(0)x+x2 ・・・(9)

これらの式を関数 f(x) の2次の近似式という.
(解説)
h0 に十分近いとき
f(a+h)≒α+βh+γh2=g(a+h)
とおくと,
β+2γh=g’(a+h)
2γ=g”(a+h)

h=0 のとき,f(a)=g(a) ・・・(*1)
h=0 のとき,f’(a)=g’(a) ・・・(*2)
h=0 のとき,f”(a)=g”(a) ・・・(*3)
を条件とすると,
(*1)より,α=f(a)
(*2)より,β=f’(a)

(*3)より,γ=

※ 一般に,anxnn 回微分すると n! an となる.
○ テイラーの定理

xaに十分近い値をとるとき,
f(x)=f(a)+f ’(a)(x−a)+ (x−a)2+…+(x−a)n+Rn
( n次導関数を f(n)(x) で表わす.)
h0 に十分近いとき
f(a+h)=f(a)+f’(a)h+ h2+…+hn+Rn
これをテイラーの定理という.( Rnは近似式と真の値との誤差 )
右辺を無限級数(数列の和の極限)にしたもの(このときRn0 となる)をテイラー展開という.
f(x)=f(a)+f’(a)(x−a)+ (x−a)2+…+ (x−a)n+···

f(a+h)=f(a)+f’(a)h+h2…+hn+···

テーラーの定理,テイラー展開において,特にa=0 の場合は,マクローリンの定理,マクローリン展開と呼ばれる.

f(x)=f(0)+f’(0)x+x2+…+xn+Rn

f(x)=f(0)+f’(0)x+x2+…+xn+···

※ テイラー展開,マクローリン展開ともに,「無限級数が収束するようなx またはh の値の範囲」を吟味する必要があるが,ここではh またはx が十分0 に近く,収束する範囲内にある場合を扱っている.

例と答

(1) f(x)=ex のマクローリン展開を求めよ.
f’(x)=ex, f”(x)=ex, ···, f(n)(x)=ex (  y(n)n次導関数 )
f(0)=1, f’(0)=1, f”(0)=1, ···, f(n)(0)=1 だから

ex=1+x+++···++···  (  x=1 を代入すると,e=1+1+++···++···  )
(2) f(x)=sin x のマクローリン展開を求めよ.
f’(x)=cos x, f”(x)=−sin x, ···  
f(0)=0, f’(0)=1, f”(0)=0 ,−1, 0, ,···  (4回微分するごとに巡回する.)

sin x=x−+ −···
(3) f(x)=cos x のマクローリン展開を求めよ.
f’(x)=−sin x,f”(x)=−cos x, ···  
f(0)=1, f’(0)=0, f”(0)=−1, 0, ···   (4回微分するごとに巡回する.)

cos x=1−+ −···
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