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== 定積分の計算 ==

◇微積分学の基本定理◇

 F’(x)=f(x)が成り立つとき,関数F(x)を関数f(x)の原始関数という.このとき,次の関係が成立する.

【微積分学の基本定理】
(証明)
 1次の近似式
F(xk)−F(xk−1)=F ’(ck)Δxk=f(ck)Δxk
xk−1ckxk
において,|Δxk| の最大値 |Δ|→0 のとき,ckxk に注意すると,
(左辺)


図のように,中央部分が消え両端だけが残るから,
(左辺)=F(xn)−F(x0)=F(b)−F(a) (証明終)
※ なぜこの関係が「基本定理」なのか?

 もともと定積分(左辺)は,総和の極限として定義されており,直接計算すれば大変な計算量となる.

 これに対して,微分は平均変化率の極限として定義され,


例えば,(x2)’=2x だから,その逆計算は 2xx2 のような簡単な式の変形である.

 この2つが等しいことが発見され,総和の極限は微分の逆計算により簡単に求められるようになった.このように,17〜18世紀のニュートンやライプニッツによる微積分学の基本定理の発見は,もともと別の道を歩んできた「積分」と「微分」を結びつけた大きな一歩となっている.(高校では,積分は微分の逆計算として導入されることが多いが,これは微積分学の基本定理のおかげである.)


◇不定積分とは◇

○ 関数 f(x) の原始関数は,不定積分とも呼ばれ

で表わされるが,次のように積分区間の上端が変数xとなる定積分に等しい.

cは任意の定数)
任意の定数c を省略すると,
これを,と書く.

○ 1つの関数に対する原始関数はただ一つではないが,それらの差は定数である.したがって,原始関数を1つ見つけると他の原始関数も求まる.(任意定数 C を足せばよい.)・・・(*→)
(*→)
関数 f(x) の2つの原始関数を F(x)G(x) とすると,
F ’(x)=f(x)G ’(x)=f(x) となり,
(F(x)−G(x))’=f(x)−f(x)=0
ゆえに,F(x)−G(x)=CC は定数)

○ 基本的な関数の不定積分
関数
f(x)=F’(x)
不定積分

(任意定数Cを付けて使う)
定数
(ただし,)
(簡単な例)

1次関数
f(x)=ax+b
2次関数
f(x)=px2+qx+r

三角関数
f(x)=sin(2x+3)
f(x)=cos(2x+3)
指数関数
f(x)=e2x+3

◇部分積分法◇
 部分積分法は,積の微分法の逆計算で,元の形では不定積分を求めにくいときに,部分積分法を使えば計算しやすい形に変ることがある.

【不定積分】
【定積分】
(部分積分法の証明)
【不定積分】
 積の微分法により,
(uv)’=u’v+uv’
この式の両辺を x で積分すると
移項すると,

【定積分】
(uv)’=u’v+uv’
の両辺を区間 axb で積分すると
移項すると,

◇置換積分法◇
 置換積分法は,合成関数の微分法の逆計算で,元の形では不定積分を求めにくいときに,置換積分法を使えば計算しやすい形に変ることがある.
【不定積分】x=g(t) とおくと
【定積分】x=g(t)とおくとき,a=g(α),b=g(β)ならば

※ 実際の計算を行うには,この公式を暗記するのでなく,被積分関数,積分変数,(定積分の場合は積分区間)の各々を等しいものに変換すればよい.(右の例参照)
※不定積分で置換積分法を用いるときは,求まった関数を元の変数で表わしておく.

2x+1=t とおくと,
   被積分関数は,(2x+1)3=t3
   =2 だから dx=


 tとおいたのは,答案作成者の都合であって,問題文にはそのようなことは書かれていない.
 不定積分の置換積分では,元の変数に戻さなければならない.
…(答)
※定積分で置換積分法を用いるときは,積分区間が変換され,結果は新しい積分区間の下端と上端 α,β を用いた数値となるので,変数を何にするかということは考えなくてもよい.

2x+1=t とおくと,x=01 のとき,t=13
   被積分関数は,(2x+1)3=t3
   =2 だから dx=


…(答)
※定積分では,値を求めることができればよく,「元の変数が何であったのかは関係ない」

◇広義積分◇

 積分区間の下端または上端が−∞,∞となる定積分を次のように定め,広義積分という.
…(1)
…(2)
…(3)
ただし,(3)では,a→−∞ と b→∞ の2つの極限は分けて考えて,
が両方とも存在するときにその和で定義されるものとすればよい.
(1)の広義積分が有限確定値となるためには,x→∞のときf(x)0でなければならない(必要)が,f(x)0であっても
のように無限大に発散するものもある.

f(x)=xk の形の関数については,
ア) k<−1 のときは,

は有限確定値となるが,
イ) k>−1 のときは,

は無限大に発散する.
ウ) k=−1 のときは,上記のように,log x−log aとなって無限大に発散する.(k=−1 が境目となっている.)

 問題 
(半角数字=1バイト文字で答えよ)
1. 次の積分を求めよ.

 (1)
=

 (2)


ここで,
であるから
   

   (原式)=log
2. −∞<x<∞ で定義される確率密度関数(統計では確率分布関数と呼ばれることが多い) f(x) は,任意の x に対して f(x)0 となる他,全事象の確率が1となることに対応して,次の条件を満たさなければならない.
 以下の各式が確率密度関数となるように定数Aの値を定めよ.
 (1) 
(解答)

となるように,定数 A の値を定める.
f(x) は偶関数だから

x=tan t とおいて置換積分を行う

x=0→∞ のときt=0= だから



だから
   A=

※分母には全角文字(記号)を使う
(2) f(x)=
(解答)

となるように定数 A の値を定める.
ex=t とおいて置換積分を行うと,
x=−∞→∞ のとき t=0→∞,=ex=tだから


ここで(1)の結果を利用すると,A=

※分母には全角文字(記号)を使う

◇立体の体積◇

 図1のような立体を x 軸に垂直な平面で切ったときの断面積を S(x) とすると,区間 axb にある立体の体積は,
で求められる.

(解説)
 円柱や角柱などの柱状図形の体積は,(底面積)×(高さ)で求められ,図2のように高さΔxx 軸方向に,x 軸に垂直な断面を底面積に選ぶと,この薄い柱状図形の体積は
ΔVk=S(xk)Δxk
となる.
a=x0<x1<x2<···<xn=b
で分割されたn個の区間について,これらの総和を求めると,
さらに,分割を細かくして,Δxk の最大値 |Δ| を限りなく 0 に近づけると,

は,定積分で表わすことができ,
となる.
図1
図2
注意
 S(x) が断面積であっても,次の図のように断面が x 軸に垂直でなければ,
は体積を表わさない.

 x 軸に垂直に切ったときの断面積を,x 座標の関数として表わすことが重要である.
 図3のように,y=f(x) のグラフと x 軸,x=a , x=b の直線で囲まれる図形を x 軸のまわりに回転してできる回転体の体積は,
で求められる.
(解説)
x軸に垂直な断面積はS(x)=π{f(x)}2
となり,これを積分すれば得られる.

 y=x2 の曲線と x 軸,x=0 , x=1 の直線で囲まれる図形を x 軸のまわりに回転してできる回転体の体積は,

 なお,図4のようにドーナツ状に中空があるときは,中空の部分を取り除く.
 図5のように x 軸の両側にある図形を回転するときは,x 軸から最も遠い線(図では赤の破線)が残る.
図3
図4
図5
 問題 
(1) 次の答案は,底面の半径がr,高さがhの直円錐の体積を求めたものである.空欄を埋めよ.
(半角小文字=1バイト文字で答えよ)
 円錐の頂点をx軸の原点にとると,xにおける断面は円になり,その半径y

y= x
となるから,
{ x}2dx=

(2) 次の答案は,半径が r の球の体積を求めたものである.空欄を埋めよ.

 球は対称形をしているから,0xr の半球の体積を求めて2倍することにする.
 右のように x 軸に垂直な断面で切ると x における断面は円になり,その半径 y
となるから,
=


◇曲線の長さ◇

○ 区間 axb における曲線 y=f(x) の長さを L とすると
○ 区間α≦t≦βにおいて媒介変数tを用いて定義される曲線
x=f(t)
y=g(t)
の曲線の長さを L とすると
(解説)
xの増分dxに対するyの増分をdyとすると,
dy=f’(x)dx
だから,この微小区間dxにおける曲線の長さdLは,ピタゴラスの定理により


両辺を区間axbにおいて積分すると,

 曲線 y= (0x1)の長さを求めよ.
(答案)
 y’=
だから








※曲線の方程式が媒介変数で表わされているときは,



より,

が得られる.


 半径が a の円を直線上で滑ることなく回転させたとき,円周上の1点が描く軌跡はサイクロイド曲線と呼ばれ,
x=a(t−sin t), y=a(1−cos t)0≦t≦2π,a>0
で表わされる.
 この曲線の長さを求めよ.
(答案)
=a(1−cos t) , =asin t




半角公式 cos t=1−2sin2 を用い,
0≦t≦2πのとき0≦≦π に注意すると, sin≧0


※円周の長さには, 2πa という形で無理数πが登場するが,サイクロイドの長さは,半径の整数倍 L=8a となるのは興味深いなお,サイクロイドの面積は円の3倍になる:S=3πa2
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